きままなアラカルト

きみと追いかけてゆける風が好きだよ

HAMLET-ハムレット-

秋の訪れを感じさせない暑さ残る9月から一気に秋めいた10月。
季節の移ろいと共に私は菊池風磨を役者として観た日々を過ごした。


憶測ですが、今回の舞台ハムレットはジャニーズアイドルだったからSexyZoneの菊池風磨が抜擢されたという、ある意味偶然とも言える主演指名だったんだろうなと思っていて。
なので私は第一報を知ったとき、初ストリートプレイに初主演にハムレット!?荷が重すぎる・・・と戦々恐々で、それは台風明けの初公演日も変わることなくその不安を抱えたまま観に行きました。


観終わった後は感動というより感激、興奮でした。
約4時間の長時間公演が楽しく感じられたこと、何より自分が応援している人が感性に響く舞台を作り上げていることにとても高揚しました。


忘れもしない初公演日。
黒い喪服姿の菊池風磨が登場し、少しぎこちなく一言を発した姿は、期待と不安に静まり返ったグローブ座の空気を震わせ、自身も震えているように見えた。
けれどその後は流れるように言葉を操り、体から言葉を発するハムレットに変貌し舞台に生きる役者の姿になり、観ている私も次第に肩の力を抜いてハムレットの世界に身を委ねられた。


そして舞台が終わり、硬い表情でカーテンコールに応じていたものの、最後に1人残り舞台の中心で軽く両手を上げると一層拍手が大きくなり、そこで初めて表情を崩し、驚き、そしてふわっと微笑んだ。
あの表情はこれからも忘れないだろう。
私はその表情を見て、風磨くんにとって初めてのストリートプレイだったことを思い出した。
菊池風磨自身の置かれた状況を忘れてしまうくらい、グローブ座の舞台に立つ私の目の前に現れた菊池風磨は役者として観ることがごく自然だった。


よく台詞を覚えて頑張っていた。
アイドルなのによく頑張っていた。
などの生ぬるい感想ではなく、私は一人の役者として舞台で生き切った菊池風磨の溢れる才能に心底痺れた。
浅いファンの私だけれど、まだ知らない菊池風磨の魅力を発見できたことはとても嬉しかった。
菊池風磨が多才な人であることは注視して見続ける限り避けては通れないことであり、痛感する度深みにはまる事実ですが、勤勉さ、思考力、創造力、瞬発力、アウトプットする力、総合的に発揮されていたのが今回の舞台だと思いました。


なかでも才能を感じたことは、初舞台であるにも関わらず役者陣の中で浮かず、主役だからといって目立ち過ぎないバランス感覚もあり、努力を感じさせることなくスマートに表に現せる力があること。
一見地味なことですが、努力で習得できる感覚ではないので才能があるとしか言えません。
この感覚が初演であるのは本当に凄い・・・。


また、既に初公演日で新しい才能の開花に感動させられたのに、回を増す毎にわかりやすく、演じ方も洗練されていく菊池風磨が居て、3週間ぶりに観に行くとまた進化していてどこまで突き詰めて行くんだ!?と、もはや恐ろしくすら感じました。


そんな菊池風磨と出会えたのも森新太郎さん演出の元であったからこそ。
森さんについては風磨くんとの対談でしか人柄を想像することができませんが、風磨くんの本質を「素直」と理解されていたので、才能ある人間と相性の良い師が出会ってとんでもない化学反応が起こり、内外問わず好評を得た今回の舞台ハムレットが出来上がっていったのだと思いました。
変化していく姿をリアルタイムで観て体感でき、観る度、本人の言っていた通りの「全てがかけがえのない一公演」でした。


今の風磨くんだからこそできるハムレットがそこに居ました。
これから先、舞台に立つことがあれば、当然今より上手になっていることと思いますが、今回のハムレットの良さはこの今にしかないものだと感じさせることができる舞台に立つ菊池風磨の姿に今この瞬間を生ききる、舞台の醍醐味を感じました。


私自身がシェイクスピアの舞台が苦手だったこともあり、まさかこんなに感銘を受ける舞台になるとは思ってもみなかったので、それも相まって私にとって今回のハムレットは素晴らしい舞台となりました。


SexyZoneとしてはニューシングル発売前の嬉しいお祭り期間ですが、まだ暫くハムレットの余韻に浸っていられそうです。